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フェルメールからのラブレター展

 

 京都市美術館で開催されている「フェルメールからのラブレター展」に行ってきた。フェルメールが3点来るというので楽しみにしていた。

土曜日の朝に行ったが、待つことなく入場できた。会場内の混雑もそれほどでもない。私は、他の絵は見ずに、フェルメールに直行。3点のフェルメールだけじっくり見た。

「手紙を書く女」

いいところのお嬢様が手紙を書いているときにこちらを向く。装飾品、机の上の引き出しの飾り、椅子の鋲まで輝く。このやわらい輝きが印象的なのがフェルメールらしい。

少女の服は黄色字に首周りとボタン周りが白いよく出てくる服で、この服の書き方がぼんやりしている。それで、こういう絵を「ぼんやり系」と私は呼んでいる。「ぼんやり系」はフェルメールの中では私はあまり好きではない。この絵も淡い光に照らされた装飾品や少女の顔の光が美しいが、「ぼんやり系」なので、印象はもうひとつ。

「手紙を読む青衣の女」

極めて美しい青色の服が印象的。淡い光の中で手紙を読んでいる。手紙は輪郭がくっきりしているのに、青衣は「ぼんやり系」。周りの淡い光の感じはまさしくフェルメールの世界で、女の青い服も美しい色だとは思うが、青い色が目立ち、絵全体としての感銘はもう一つだった。期待していただけに、少し残念。

「手紙を書く女と召使い」

今回の3点ではこの絵がベスト。服の袖のしわまでくっきり書いている「くっきり系」で、この絵だけが、窓を描いている。窓にかかる白いカーテンの淡い光や、手前の黒いカーテンの陰影も絶妙。窓枠やステンドグラスもきわめて美しい。そして手紙を書く女の頭を覆う白い布。このレースが極めて細かく細い糸の1本1本が光り輝いている。手前の刺繍付きの布もいいし、全く隙のない絵だと思った。

私は絵を見るとき全体を十分把握することを優先する。そうしないと、絵を十分に理解できないと思っているからである。しかし、フェルメールの場合、近づいて細部をじっくり見なければその凄さを見逃してしまう。「手紙を書く少女」のカーテンの淡い光と頭のレースの光は近づいてみないとその美しさに気がつかないかもしれない。小さい絵の場合はある距離から細部も全体もよく分かるのだが、今回の3点はフェルメールの絵としては小さいものではないから、全体は少しはなれて、細部は顔を近づけてみないと分からない。だから、その点は鑑賞が難しいかもしれない。

まさに「神は細部に宿り賜う。」のだ。

結局、フェルメールの3点だけ見て来た。でも、大変充実した気分。ヨーロッパに行けば、通常展示なら、フェルメールでも一人静かに見ることができることもあるが、そんなにヨーロッパにいけるわけではないので、来日してくれるのはありがたい。またフェルメールの絵が関西に来たらぜひ見たいと思った。