沼尻竜典オペラセレクション ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》:KINUZABU-Music
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沼尻竜典オペラセレクション ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》

日時
2010年10月10日(日)14:00~18:40
会場
びわ湖ホール大ホール(大津市)
指揮
沼尻竜典
演出
ミヒャエル・ハイニケ
曲目
ワーグナー作曲 楽劇《トリスタンとイゾルデ》
配役
マルケ王 松位浩
トリスタン ジョン・チャールズ・ピアーズ
イゾルデ 小山由美
クルヴェナール 石野繁生
ブランゲーネ 加納悦子
管弦楽
大阪センチュリー交響楽団
合唱
びわ湖ホール声楽アンサンブル
東京オペラシンガーズ
席番
3階3B列48番
ticket
 

 秋のびわ湖ホールのオペラは昨年はベルグ作曲《ルル》だったけれど、今年はワーグナー作曲《トリスタンとイゾルデ》。毎年果敢な挑戦的な演目。昨年の《ルル》の演奏には満足したけれど、今年はどうか?


 会場は8割ぐらいは入っているのだろうか?3階席の正面はガラガラ。ちなみにNHKの収録があり、TVカメラを6台確認した。



 一旦ピットも含めて真っ暗になってから舞台正面に屋敷のファザードが現れる。前奏曲は弦がきれい。うっとりしていると、金管が横からぶち壊す。重い弦に軽い管。思いっきりKY。そして、音量が小さい。ワーグナーなんだからもっと爆発して欲しい。


 前奏曲が終わると屋敷のファザードは横に消えて奥に大きな窓があるイゾルデの居間が現れる。イゾルデの小山さんの声は上品で気位が高く、力強くて理想的な歌。最初からこんなに飛ばして大丈夫かな?ブランゲーネの加納さんもいい。


 ブランゲーネがイゾルデの伝言をトリスタンに伝える場面では、舞台が180度近く回転して、舞台装置が、実は船で、イゾルデの居間にあった大きな窓は船の帆であることが分かる。船の舳先にいるトリスタンのピアースは発声は不明瞭、くぐもった声であまり感心できない。だけど、クルベナールの石野さんは立派な声ですばらしい。


 船の装置は場面によって回転し、1幕後半はイゾルデの居間。薬を出す頃から小山さんの声が不安定になり、やっぱり最初から飛ばしすぎだった。でも1幕後半とは早いな。 オケは最後は大きな音を出して1幕終了。



 2幕は、最初のファザードがあって、イゾルデはそこの窓でトリスタンを待つ。トリスタンが現れると、ファザードが上に消え、広い丸みを帯びた舞台が現れる。ここでトリスタンとイゾルデの愛の歌が延々と続くが、背景に大きな黒い丸が降りてきて夜の闇が広がるが、白い背景が徐々に赤く変わり、メロートの策略が迫っていることを伝えているようだ。


 このときの音楽がとても残念。ルーチンでとにかく演奏するのに精一杯で、場面の官能を全く伝えてくれない。先日聴いた飯守さん指揮関西フィルの演奏とは大違い。


 歌は、小山さんは1幕前半の勢いはないにしても、それなりに頑張っていた。ピアーズは声が出るようになって、声を聴くのはよかった。


 マルケ王が登場すると、背景の大きな黒い丸が舞台に落ち、背景に大きな割れ目。そしてマルケ王の松位さん!張りのある朗々と響き渡る高貴な声。いや、すごかったわ。こんなにすごいバスがいるんだ。


 2幕でも、オケは最後だけ大きな音を出して終了。



 3幕は、トリスタンの居間。円筒状の丸い壁には、本が一杯。天井に上る階段があり、天井には羊飼い。この部屋のベッドでトリスタンが嘆く。声はいいけれど、ピアーズの演技はだめ。ただのでくの棒。他の人がしっかり演技をつけているからすごく目立つ。


 イゾルデの船が来る報がくると、トリスタンは階段を上って屋根に上るが、居間は舞台下に下がり天井には2幕の丸みを帯びた広い舞台になっていた。奥にはマルケ王の屋敷のファザードが。トリスタンはマルケ王の屋敷内に幽閉されていたんだ。


 そして、みんなが集まり、トリスタン、メロート、クルベナールが死んで、白いベールをまとったイゾルデが舞台前方中央に立つ。最後の「愛の死」。


 イゾルデの舞台だけがだんだん迫り上がり、白い神々しい光に包まれて、白いイゾルデが上りながら「愛の死」を歌う。小山さんは苦しそうだったが、何とか歌う、オケも頑張る。イゾルデを見ているだけで、何だか自分の心の中が澄み切っていく、何かに昇華していくような気がして、思わず涙が出た。


 そして、演奏が終わると、両側からゆっくりと幕が降りたが、最後の音が消えるまで誰も拍手をしなった。それだけ最後のシーンに圧倒されたのだと思う。



 今回の公演は、しっかりした演出とピアーズ以外の演技、そして脇を含めた歌がよかった。小山さんは途中からばてたけれど、仕方ないだろう。これでピアーズの演技がちゃんと出来ていればもっとよかったのだが。


 演出は、シンプルだけれど、効果的。1幕はじめと3幕後半のマルケ王の屋敷のファザードが出ていたのは、この物語が全てマルケ王の屋敷の中での出来事であり、3幕でカレオールと思っていた場所が実はコーンウォールでマルケ王に幽閉されていた、というのは、納得できるストーリーだと思った。そして最後の「愛の死」の演出は神々しいまでに光り輝いていた。


 問題は指揮と管弦楽。指揮はぬるいところと集中したところがあって、歌手に合わせたのかなとも思える。また、全体的にオケ音量を落としていて、ワーグナーの官能があまり味わえなかった。でもこれは好みの問題かもしれない。


 管弦楽は、弦はそれなりによかったが、金管が悪すぎ。音色がワーグナーと全く合わない。ワーグナーは金管がしっかりしてないとそれだけで興ざめだし、折角の音楽が台無し。贅沢を言えば、弦ももっと厚みがほしい。


 そして、全体的に音が小さい。中編成の大阪センチュリーがワーグナーをやるのはエキストラをたくさん入れないといけないから無理があるような気がする。せめて京響、理想は関西フィルを読んで欲しい。去年の《ルル》はよかったのに、今回は練習が足りなかったのだろうか?