food return

鰻の話

 

 私は鰻が大好物である。鰻を焼く匂いがすると思わずそちらに足が向く。


 鰻には虫を入れる関東風と、蒸しを入れない関西風があるが、関西風がすきである。理由は、歯ごたえがしっかりしているから。表面がカリッとして、中がジューシーというのはたまりません。


 お店で食べるという種別では、大阪西天満老松通りにあった「遠州」が安くて美味しかったのだが、悲しいことに、2007年末に閉店してしまった。


 そのほかでは「本家柴藤」しか行った事がない。ここは安いメニューはあるが、ご飯たっぷりで、鰻を食べた気がしない。だから、上を食べなければならない。値は張るが、大変美味しい関西風の鰻を食べることができる。感動したのは皮のぱりぱり。ここまでぱりぱりに焼ける店がほかにあるのだろうか?と思う。


 店で焼いたのを買って食べるという種別では、京都錦の「のとよ」がなんといっても一番。炭火で焼き、長年継ぎ足したタレがうまさの秘訣だろうか。ちょっと高価でも、身の厚い鰻を買うほうがいい。ここは鰻以外にも美味しいものがある。例えば子持ち鮎の柔らか煮。ふんわりした鮎に子持ちのふよふよがたまらない。また、生きたすっぽんや大鯰がいたりする。夏休みの宿題にもってこいの店である。


 次は、京都宇治の「ふな栄」。ここも炭火で焼く。昼前のショウウィンドウは鰻だらけで壮観である。ここの鰻は、焼く前に宇治川の生簀に入れて養殖鰻の臭みを抜いているという。だからこそ、あの野趣あふれる鰻が焼けるのかと思った。


 次は、滋賀大津のオカモト水産である。ここは、大津の商店街を歩いている時に鰻を焼く煙で気が付いたお店である。ここも鰻がたくさん並べられて壮観。ここの鰻は身が厚くて、ふんわりしているのが特徴。でも皮と焼き目のぱりぱり感はそのまま。大津の商店街にはこの店以外にもたくさんの川魚屋さんがあり、町中で鰻を焼いているようなところなのだが、ここだけであれだけの量が裁けるのが不思議である。


 最後に東京の有名店の話。結構何度も通っていたのだが、そのうち、変なにおいに気が付くようになった。何時行ってもその匂いが気になる。多分、その匂いは鰻を洗っている水の匂いで、それが鰻の身に染みこんでしまったのだろう。炭火にこだわるという店主の言葉の割りに、水に神経を使わないその店のあり方に疑問を持ち、それからは行かなくなってしまった。東京で立ち寄る店が減った。(2009.7.25)