鞄道楽
道楽と言うほどではないが、私にはいくつか好きな鞄メーカーがある。以前はメーカーなど考えることなく会社用の鞄も休みの日に担ぐバックパックも適当に買っていた。女性がブランド品のバッグを持ち歩くのをなんとも思っていなかった。
そんなある日、かみさんと京都に行って、「一澤帆布」という鞄やさんに行った。ここで見つけたバックパックが妙に気に入って、15年経過した今でも3代目になるが使っている。ここの鞄は帆布で出来た丈夫で美しいもので、女性のファンも多い。休日や日常のお使いにはもってこいの鞄である。ただ、遺産相続のもつれで三男が「一澤信三郎帆布」に分裂してしまったのはちょっと寂しい。(右が2代目、左が3代目)
さて、私も年をとるにつれて、休みの日でもしっかりした正統的な鞄が欲しくなってきた。東京までオペラを見に行く機会が増えたのも影響している。それで百貨店をうろついて見つけたのが、当時まだ日本に上陸したばかりの「TUMI」である。
ここのナッパレザーの鞄は大変美しい。形も機能的で私というか男好みである。今や多くの人がここの鞄を持ち、ここのデザインを模倣した製品も多く出回っている。値段はそれまで買っていた鞄に比べると目の玉が飛び出るほど高価だったが、女性が買うブランド品の鞄と同程度かそれ以下の価格である。よっしゃ、とレザーの美しさに負けて買ってしまった。その後、「TUMI」の製品は、会社用のショルダー、コンサート用の小さなショルダー、小旅行用の大きなバックパック、財布、小銭入れと膨張するかのように増えていってしまった。
だが、この「TUMI」の鞄の欠点は耐久性がもうひとつであることである。ショルダーの滑り止めは3つも交換したし、ファスナーが弱く、無理やり閉めると開いてしまうことがある。今の製品は、これらの欠点を認識したのか、滑り止めの部材は代わっているし、ファスナーもしっかりしたものに改善されている。レザーもナッパレザーでなくグローブタンレザーに代わっている。グローブタンレザーは重いのが欠点だが、耐久性は上がっただろう。「TUMI」も進化した。
今「TUMI」で欲しいのは、容量の大きなバックパックである。今まで使っていたバリスティックナイロン製のバックパックがかなりよたってきて、縫い目もほつれてきて、重いものを入れるのに若干不安がある。レザーが望ましいが、そういう商品は今はない。そんなに急ぐわけではないので、いつか出てくるだろうと、今は様子を見ている。
「TUMI」のバックパックがなかったので、ほかにレザーのバックパックがないか探してみると、いくつか出てきた。その中で「土屋鞄製造所」のバックパックが目に止まった。京都に店があるので行くとその商品があったので見せてもらったが、残念ながら私の好みには合わなかった。しかし店内を見渡すと面白そうな鞄が一杯あった。そのうち、黒革のメッセンジャーバッグを気に入ってしまい、買うかどうか迷った。その時は買わなかったが、後でどうしても欲しくなって、電話で確保した。後日京都店を再び訪れてメッセンジャーバックを買った。家に帰って、包装を空けると、きれいな革の鞄が出てきた。所有欲を満たすには十分な鞄である。
二日ほど会社に行くのに使ったが、とても使いすい。その理由は、ほとんどファスナーがないからである。鞄のふたを開けるだけで、すぐに中の荷物にアクセスできる。これは逆に考えれば、スリなどに狙われやすいことも意味する。日本ではいいが、パリでは使えるか?ちょっと悩ましいところである。
それはともかく、「一澤信三郎帆布」「TUMI」の他に「土屋鞄製作所」という私好みの鞄やさんが増えたのはいいことだろう。「一澤」と「土屋」は京都に店があって近いし気軽に鞄を選べる。
後は、「TUMI」のバックパックに代わる新しいパックパックが現れるかどうかである。夏までには何とか新作が出てきて欲しいものなのだが。