第63回正倉院展(2011)を見た
今年も正倉院展に行った。蘭奢待が出陳されているということで話題になっていたが、それ以外に印象に残ったものが一杯あって、 蘭奢待を少ししか見なかった。前にも見ているし、そんなに好きじゃないし。
とにかく今年は、きれいなものがむちゃくちゃ多い。
一部写真は
奈良国立博物館のweb
に掲載されている。
出陳番号6
縹纐纈布袍(はなだこうけちぬののほう)
絞り染めの上着
白い布に藍染めの太い線で斜めの縞模様にしたもの。初っ端から圧倒された。
出陳番号7
紅布(べにのぬの)
紅花染めの麻布
今でもこんなに鮮やかな赤が残る。これがたなびく姿はさぞや美しかっただろう。
出陳番号12
紅臈纈絁等雑貼(べにろうけちあしぎぬとうざっちょう)
ろうけつ染めの裂などを貼り交ぜた屏風紅
美しい赤に文様が残る。布の残骸だが、赤の美しさにほれぼれする。
出陳番号18
斑犀把樹皮塗鞘銀荘刀子(はんさいのつかじゅひぬりのさやぎんそうのとうす)
小刀
刀のさやも美しいが、さやにつく紐がまた繊細で美しい。
出陳番号23
佐波理合子(さはりのごうす)
塔形のつまみのふたもの
小さくてかわいらしくてきれい。おもちゃみたいだ。
出陳番号21
赤銅合子(しゃくどうのごうす)
塔形のつまみのふたもの
これも大変かわいい。色も形も美しい。
出陳番号26
鉄三鈷(てつのさんこ)
鉄製の仏具
錆びのほとんどない鉄が当時の姿で残っているのは奇跡ではないかと思う。見とれて動けなくなった。
出陳番号28
七条織成樹皮色袈裟(しちじょうしょくせいじゅひしょくのけさ)
綴れ織の袈裟
凝った模様の袈裟。いろんな色の雲がたなびくよう。縁の織模様も大変美しい。縁の織模様は一目ではよくわからないが、こんなものがまだ美しいまま残っているのはすごい。
出陳番号29
御袈裟幞袷(おんけさのつつみのあわせ)
袈裟のつつみ
極めて鮮やかな青い布。文様もきれいに残っている。青い色に魅了される。
出陳番号36
暈繝錦几褥(うんげんにしきのきじょく)
献物用の台の上敷き
緑、茶、藍、紫の線と文様の付いた布。線はきれいなグラデーションで横の線とつながり、その細やかな美しさに見とれて言葉が出ない。
出陳番号37
碧地金銀絵箱(へきじきんぎんえのはこ)
献物箱
外の水色と金銀の文様もきれいだが、箱の中の布の美しさもすごい。
出陳番号38
金絵木理箱(きんえもくりのはこ)
献物箱
柿木の皮を表にして樹皮の縁を金で塗ったものが蓋になっている。光の当たり方によっては金の色と荒々しい木の表面が美しいハーモニーを奏でる。
出陳番号39
金銀鈿荘唐大刀(きんぎんでんそうのからたち)
儀式用の大刀
どこをとっても美しい。漆の塗りも鞘のえい皮も金物の飾りも飾りに埋め込まれた玉も。いつまでも見ていたいが、行列。
出陳番号54
漫背円鏡(まんぱいのえんきょう)
文様のない鏡
素朴で、暖かくて、心が穏やかになる鏡を見たのは初めて。
出陳番号58
竹帙(じす)
経巻のつつみ
こんなに色鮮やかできらびやかで繊細で美しいものが今、こうしてみられるのは奇跡だ。竹簾に織られたい糸のグラデーションのうつくしさといい、縁の布のきらびやかな彩色といい、あまりの凄さに体が硬直する。
今年もきれいなものを一杯見ることができた。写真や事前の出陳情報ではわからない美しいものがいつもいっぱいある。それらは正倉院展に行って実際に見ないとその美しさを感じることができない。 改めて日本の文化の深さを思う。 これをさらに後世に残していく、技術を伝承していくことが我々に求められていることなのだろう。