letters-top return

鉄道旅行の待合時間の過ごし方

 

 私は鉄道ファンであり、そのうち乗り鉄に属する。


 ローカル線ののんびりした走りの心地よい揺れに任せながら、外の景色をボーっと見ることが大好き。昔は均一周遊券で特急や急行、普通列車を使い、近年は青春18切符で各停のみを乗り継いで、いろんなところへ行った。


 こういう旅行で問題になるのは、列車の乗り継ぎ時間である。最近では乗り継ぎ時間を短くして、短時間で遠方までいけるようになっているが、昔は、そういう都合も考えず、平気で1時間や2時間の待ち時間があったり、同じ列車でも、一つの駅に1時間近く停車するような場合もあった。このような場合にどううまく時間を使うかに苦労したが、実は、このような時間をどう使うかも乗り鉄の醍醐味であった。


 待ち時間を使う方法をいくつか挙げると以下のような方法があった。


1 駅の周辺を歩く
 あらかじめ行き先周辺の地図(国土地理院発行の5万分の1の地図)を用意して、面白そうなところにあらかじめめぼしをつけ、そこに行く。あるいは、何も考えず駅の周りをぶらつく。これで、その駅周辺の状況がよく分かり、その地域の社会情勢を垣間見ることができる。時間があれば結構遠くまで行き、例えば山を登って眺めのよさそうなとこを探したり、川沿いや海岸を歩いたりすることもある。


 山陰線の鎧駅の近くには、私のお気に入りの場所があったが、果たして今現在、行くことが可能なのかわからない。


2 スーパーや百貨店の食品売り場に行く。
 私は食品売り場が好きである。地域によって変わった食べ物があったりすると、面白がって買ってみることも多い。高知県の中村で川エビの醤油煮を買って、ビールのつまみにしたときは大変いい時間を過ごすことができた。


3 郵便局に100円貯金をする
 大抵の駅の近くには郵便局がある。そこで100円貯金をして、貯金通帳に郵便局名を印刷してもらうのである。やはり5万分の1の地図であらかじめ場所を確認しておくことが多い。地方の特定郵便局などでは、印刷機がなくはんこのところもあって、仲間内で貯金通帳を見せ合う時にそういう郵便局のはんこが多いと、ステータスが高かった。こういう行動を「鉄ちゃん」になぞらえて、「郵便局ちゃん」と呼んでいた。


4 役場に行って写真を撮る
 昔は田舎の駅は大抵、町村の代表駅で役場が近所に合った。5万分の1の地図であらかじめ場所を確認しておいて、役場の玄関で記念写真を撮った。
これは「役場ちゃん」と呼んでいた。


5 駅でボーっと過ごす
 例えば、飯田線の中井侍という駅は、谷の中腹にあり、眼下を天竜川が滔滔と流れる。人家は駅近く以外は何処にもない。こういう景色の中で自然に浸るのも大変気持ちがいい。


 私は、悲しいことに、最近はこういう旅をしていない。またふらっと旅に出て悠久の時間を過ごしたいと思う。