始まりはブルックナー
私のクラシック音楽への道はブルックナーから始まった。
友人が大学の研究室で聞いているのを横で聞いてなんとなく面白いな、と思い、生協で一番安いLPを買った。ブルックナーの交響曲第4番、管弦楽はウィーンフィル、指揮はクナッパーツブッシュである。聴いてみて驚いた。これまで研究室で聴いていた音楽とは全然違う。曲も違うし指揮も違う。ブルックナーだけでなく、私の一番好きな指揮者クナッパーツブッシュとの出会いもここが始まりである。
それから、エアチェックで、ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管弦楽団のブルックナー交響曲第8番を聴いた。これには大変感激し、何度も何度も繰り返し聴いた。
そして生演奏でブルックナーを聴きたくなった。関西では、朝比奈隆さんがブルックナーを何度も取り上げて演奏していた。それで、定期演奏会に通うようになった。
朝比奈さんのブルックナーは、その時々によって変わった。速さもそうだし、曲の捕らえ方も変わる。ブルックナーの交響曲第7番は朝比奈/大フィルのザンクト・フローリアンのライブが私の一番のお気に入りだが、その音楽を求めて演奏会に行くと必ず裏切られる。行ってみるまで分からない、最初に聴いた朝比奈さんはそんな人だった。
こんな状態だったので、春休みにヨーロッパに行った時、ベルリンフィルがブルックナーの6番を演奏するというので、スケジュールを組んで聴きに行った。もう25年も昔のことなので詳しいことは忘れてしまったが、すばらしい体験だったことは覚えている。
ちなみに、ウィーンのYHで一緒になった人に、「ブルックナーからクラシック音楽を聴き始めた。」と言うと、決まって「珍しいですね。」と言われた。特に楽器の演奏者の場合はそうだった。
ブルックナーで一番好きな演奏を一つ挙げるとすれば、1963年のウェストミンスターから出たクナッパーツブッシュ指揮ミュンヘンフィルのブルックナー第8番。悠然かつ壮大な演奏。
ブルックナーの実演で一番よかったと思ったのは、ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ交響楽団のブルックナー交響曲第8番。引き締まった、一瞬の隙もない演奏。最後の来日に聴きに行けなかったのが大変悔やまれる。
チェリビダッケも生で聴いたけれど、あの人のブルックナーはどうも一癖あって好きになれない。でも、ベルリンフィルとの邂逅コンサートでのブルックナー交響曲第7番の録音は慈しみを蒸留したような繊細で美しい演奏だった。
先日聴いたティーレマン指揮ミュンヘンフィルのブルックナー交響曲第8番もすばらしかった。ただ、ウェストミンスターのクナッパーツブッシュと似ているような気がしたけれど。