music return

ヘンデルのオペラが好き

 
 

 私がヘンデルのオペラを好きになったのは、2003年だかにNHK-BSで放送された、2001年バイエルン国立歌劇場プリンレツゲンテン劇場での《リナルド》の映像を見たときからです。


 デービッド・ダニエルズのリナルドなど、カウンターテナーが4人も出演して、演出も面白い。楽しくて、美しい音楽で一杯で、目からうろこ。録画したDVDを何度も何度も見てしまいました。それ以降、買うCDはヘンデルのオペラばかり。でもヘンデルのオペラのCDは少ないし、日本語の訳もないし、本もない。音楽を聴きたいと思っても、中身を知ろうと思っても、なかなか大変でした。今は、CDもDVDも本もたくさん出て、おかげで出費がかさんで別の意味で大変です。


 ヘンデルのオペラのいいところは一杯ありますが、あえて言えば以下が好きなんだろうと思います。


・メロディメーカーであること
 メロディの美しさは絶大。昔聞いたことのあるメロディが次から次へと出てきます。また、同時代のバッハのストイックさと対極にあるような気がします。


・アリア後半の装飾音の官能
 ダカーポ・アリアの繰り返しの部分に装飾音を加えるのが普通で、それが超絶技巧を伴えば大変美しく官能的ですらあります。歌手によって違うので、聴くまでどうなるかわからないところがはらはらして面白い。


 これらのヘンデルのよい点は、名歌手と名指揮者によって十二分に引き出されます。特に名歌手によるアリアの美しさは、他では味わえない快楽を与えてくれます。例えば、ヴェルディでHi-Cなどの強い高音に酔いしれ、ヴァーグナーで破壊的な声と管弦楽に圧倒されるのと同様に、ヘンデルではメロディと装飾音の超絶技巧で官能的なまでの美しさに魅了されます。それは、その快楽を再び得たいと強く願う麻薬の様でもあり、そのために、CDはもちろん、実演に接する機会を増やしてしまうのです。


 しかし、日本で実演に接する機会は極めて少なく、今まで、私がヘンデルの声楽作品の実演に接したのは以下です。


トン・コープマン指揮
 アムステルダム・バロック管弦楽団、他
  オラトリオ《メサイア》
ウィリアム・クリスティ指揮
 レザール・フロリサン、他
 《陽気な人、沈思な人、中庸な人》 (於パリ)
Vivava Opera Company公演
 歌劇《アルチーナ》
バイエルン州立歌劇場来日公演
 歌劇《アリオダンテ》
Vivava Opera Company公演
 歌劇《デイダミア》
ニコラウス・アーノンクール指揮
 ヴィーン・コンツェントゥス・ムジクス
 オラトリオ《メサイア》
Vivava Opera Company公演
 歌劇《イメネーオ》
Vivava Opera Company公演
 歌劇《トロメオ》
Vivava Opera Company公演
 歌劇《オルランド》


 最初のコープマンの《メサイア》はまだヘンデルに目覚める前で、退屈で仕方ありませんでしたが、それ以外は、大変よい思い出です。中でもクリスティとアーノンクールはともに美しくて、精緻で、明るくて、最高にすばらしかった。バイエルンの来日公演は、アリオダンテ役がもう一つなのが残念でした。


 Vivava Opera Companyは宝塚や伊丹でヘンデルのオペラを次々と上演してくるれるので、毎年一度はヘンデルのオペラの公演に接することができます。歌手に凹凸はありますが、最近は全体のレベルが上っています。でもこの団体がヘンデルのオペラを選んだ理由は、合唱もないし、登場人物も少ない、オケも小編成で済むので経済的だからだそうです。


 それはさておき、ヨーロッパでは一般的なレパートリーになっているヘンデルのオペラを日本でももっともっと公演を増やしてもらって、私も実演に多く接したいものです。(2010.5.20)