インターネット前後の外国音楽チケット入手事情
1987年に初めてヨーロッパに行ってウィーンでオペラを見たり、ベルリンでベルリン・フィルを聴いたが、チケットは全て現地で調達した。当時は国内で事前に公演のチケットを入手する方法は高額な手数料をとる数社の専門会社以外知られてなかった。
1990年に新婚旅行でウィーンに行ったときは、さすがに予約できるものはしておこう、となった。ウィーン国立劇場連盟では、以前から、葉書によるチケット予約を受け付けていたので、必要事項を書いて投函した。FAXでも受け付けているようだったが、東京にあるウィーン観光協会に電話すると、「FAXでは紙が詰まったりするし、うまく行ったという例を知らないので、やるなら自分の責任でやってくれ。」と言われた。
しばらくして返事が来た。申し込んだ演目のうち2つが満席、1つが取れたらしい。席の場所はわからない。1つのチケットが1600シリング、もう1つが450シリングぐらいだったと思う。2席隣じゃないのかな?と不思議に思った。
チケット予約はできたが、次に送金をしなければならない。当時クレジットカードの決済はほとんどなく、他にいくつかの海外送金の方法があったが、銀行で送金手数料が安いという送金方法を使った。為替か小切手か忘れてしまった。係員もやったことがないので1時間以上待たされて送金した。受け取ってもらえたのかとても不安になった。
ウィーンに行き、ウィーン国立歌劇場のチケットオフィスに行くと、我々のチケットはあったが、金額が不足だと言われた。小切手をウィーンで換金する手数料を含めてなかったからだ。その分を支払ってチケットを受け取った。チケットは同じボックスの1列目と2列目だった。値段の違いはこれだったのか。とまあ、いろいろ大変だった。
それ以外は、現地に行って入手した。簡単に入手できるものは直接入手したし、直接入手できないものは、手数料はかかるが現地のチケット屋から購入した。(ウィーンのみ)
このように、インターネットが普及する前は、旅行前に日本でヨーロッパのチケットを手配するのには大変な労力を要した。もちろん、専門会社に依頼すれば簡単だっただろうけれど、手数料を考えると二の足を踏んだ。
ところが、インターネットが普及し始めた1998年にヨーロッパに行ったときは、事情は大きく変わっていた。ドイツの歌劇場などでは、インターネットでチケット申し込みを受け付けてくれた。ドレスデン・ザクセン州立歌劇場は電子メールで依頼できたし、ベルリン・ドイツ・オペラはweb画面で座席の指定までできた。今は当たり前だが、当時はカルチャーショックだった。代金決済はクレジットカードが主だった。
ウィーン国立劇場連盟はまだwebページを持っておらず、電話してチケットを取った。決済はクレジットカード。ただし、ウィーンのチケット屋でインターネットに店を開いているところもあって、そこから事前に申し込んでおくこともできた。
時代は変わり、今やどこの劇場もwebページを持ち、世界中からチケットの予約ができる。しかも、多くの劇場が英語で予約ができる。現地の言葉に疎い人でも何とかチケット購入へ辿りつける。世界中の劇場が世界中から劇場に来てもらおうとしている。グローバルな劇場が世界標準になった。
我々がヨーロッパに行って、オペラを見たり音楽を聴くのはとても便利になった。インターネット以前と以後で大きく変革を遂げた分野の一つだろう。