ザクセン州立歌劇場オペラフェスティバル公演
《軍人たち》 2/2
始まる前にピットを覗くと、弦は少な目ですが、金管や打楽器の数がとても多く、トランペットだけで6本ほど並んでました。初めて聴くオペラですのでこれだけで期待が高まります。また、会場の平土間の真ん中の席に黒い人形が座っていて、どうやら電子音響の調整用のダミーのようでした。
会場が暗くなると突然大音響で前奏曲が始まってしまい驚きましたが、このフルオーケストラの絶叫がそれから延々5分ほど続き、その迫力にはじめから圧倒されてしまいました。オケの音を聞いてますと、この劇場は音が体を包み込む感じで、音の洪水に浸れる劇場のようです。ですが、ちゃんとすべての音が聞き取れました。前奏曲の途中で幕が開くと、舞台床の2mぐらい上を下端として幕を四角く切り取った黒い箱のような舞台があらわれ、その中で物語りが進行していきました。
前奏曲ではその舞台上に白い服を着、顔を白く塗った20人ほどの群集が現われ、一度幕が閉じた後に再び開くと、マリーとシャルロットの姉妹が白い服で立っていて手に持ったワンピースを着始めました。この演出では、初めは何の色にも染まっていない白い服の上にワンピースを着たマリーが、軍人の赤、ストルツィウスの黒、伯爵の黄色に染まろうとするが、最後は猟師に犯されて血塗られてしまうという、とてもわかりやすいものでした。動きも象徴的で、ヌードショウもなく、かなり完成された印象を受けました。
演出の圧巻はマリーが犯され娼婦に転落していく場面で、四角の舞台がその上に20人ほどの軍人とマリーをのせたまま、幕に垂直な方向を軸として徐々に回転し、最終的に30度ほどの傾斜を持つ斜めの箱になってしまったところです。マリーは、坂となった舞台の上で徐々に下方に滑り落ち、這い上がろうともがきますが、動きが取れません。それを坂の上のほうから赤い服を着た軍人たちが見下ろすという光景は、激しい音楽とともにとても衝撃的でした。
そして最後は、舞台が水平の状態に戻って、前奏曲のときと同じように白い服の群集と赤く血塗られたマリーが現れ、群集は血塗られたマリーを見ながら、だんだんマリーから離れていき、幕となりました。
音楽は、ツィンマーマンの激しい音楽に圧倒され、また、それを激しく演奏するオケの能力にまさに圧倒されました。歌手は、マリーの父のVOGELとストルツィウスのEDELMANNが特にすばらしく、マリーのSCHUDELも出ずっぱりでもしっかりした歌唱で歌いぬきました。その他の独唱陣もみなハイレベルで、すばらしいの一言。
オペラフェスティバルですから当然かもしれませんが、ベルリンとはちょっとレベルの差がありすぎるような印象でした。