ヴィーン復活祭音楽祭演奏会《マタイ受難曲》 2/2
演奏は始めの合唱から、すばらしいでき。合唱はよくコントロールされていましたがヴィーンフィルはその特徴を押さえることなく艶かしい音色を出してました。バッハと合わないかも知れませんが、私にはうれしかったです。
また、楽友協会大ホールの音の素晴らしさ!音色にきらきらした装飾が自然に加えられ、左右に分けられた管弦楽と合唱団の対比も絶妙。これはもう快感としか言いようがありません。
始めからこれなのに、さらに独唱陣も最高。中でも福音史家のTROSTは透き通るきれいな声なのに十分にドラマティックでひたむきで声量も安定感もすごい。しかも、この長い曲のもっとも重要な福音史家とテノールのアリアを一人でこなしても最後まで衰えることが全くない!
翌日の朝も同じプログラムがあったのですが、聞いた話ではこちらでも全くそのとおりだったそうな。いや、こんなすばらしいテノールがいたなんて、ほんとに驚きました。
プログラムの紹介記事を見ますと、モーツァルトのオペラを中心にヨーロッパで活躍しているそうで、年もまだ32~3歳ですから、今後がとても楽しみです。あと、イエスのGOERNEもディティールがすばらしいしアルトのDANZも声の質も安定感も最高でした。また、バスのQUASTHOFFも来日公演のときと同様に朗々とした美声を堪能させてくれました。
RILLINGの指揮は、管弦楽や合唱団に任せるようなやり方で、おおらかに振ってました。それだけ、自由な雰囲気でドラマティックでしたが、押さえるところはちゃんと押さえる、そんな感じでした。また、「憐れみたまえ」の前の福音史家のレチタティーボではTROSTは楽譜を閉じて胸に当て、感動的な歌唱で涙を誘いました。
それにしても、ほんとに最高、完璧なマタイでした。こんな機会にヴィーンにいてそれを聴けたなんて、何かの巡り合わせのような物を感じてしまいました。幸運とはこういう事を言いのかもしれません。