ザ・タリス・スコラーズびわ湖公演
アレグリ ミゼレーレ
クローチェ 我らの大地は賛美の喜びに沸く
ガブリエリ ほむべきかな、主なるイスラエルの神
フェスタ 汝はなんと美しきことか
パレストリーナ 麗しい救い主のみ母
しもべらよ、主をたたえよ
ロッティ 十字架にかけられて(アンコール)
大きな大ホールで10人ほどのバロックのアカペラということで、いくら音響のいいびわ湖ホール大ホールでも、ちょっとつらいかも、と不安の中で、会場に行きました。
1800 人入る大ホールは7割ぐらいの入りか。東京公演と比べると、とても安い(S席で4500円)だから、興行的には苦しいでしょう。舞台上は、反射板が設置され、このホールがコンサート用に配置されているのを初めて見ました。11月のリヨン国立歌劇場管弦楽団の公演もこうなるのでしょう。
さて、公演開始。第一声とともに、不安は杞憂だと分かりました。声が響き渡り、音圧も十分。天井から音が落ちてくる様は、大阪のザ・シンフォニーホールを思い起こさせました。あそこも1800人で、こんなコンサートをやりますもんね。
それにしてもすばらしい合唱。バロック唱法でノンビブラートの調和した声が突き抜ける。パロック合唱の美しさを堪能しました。一番よかったのはガブリエリの「ほむべきかな、主なるイスラエルの神」でしょうか。輪唱などで合唱の奥行きが深く、とても気持ちよかった。
ただ、パレストリーナの「立ち上がれ、輝け、イエルサレムよ」で単調に感じてしまいました。合唱はすばらしいのですが、抑揚などに不満を感じてしまったのです。まあ、40分の長い曲ということもあるのですが。
でも、例えば、これをラ・ベネシアーナが歌っていたらどうなったでしょう?多分、エマニュエラ・ガッリと ロベルタ・マメーリという強烈な個性ある二人のソプラノが競うように歌うでしょう。調和とは無縁。でもクラウディオ・カヴァーナの指揮によって調和は保たれる。 調和の中の不調和が音楽をより生き生きとしたものに 作り上げられるでしょう。
思えば、イタリアの合唱は調和の中に不調和が混在しているように思えます。例えばバチカン・システィーナ礼拝堂合唱団もそう。全員が個性ある歌を歌いますが、指揮が個性をそのままにまとめていく。とても不思議な体験をしました。
それを思えば、調和を重んじるだけではなく、もっと不調和もあっていいのではないかと思いました。
と、不満も感じてしまいましたが、美しい調和のある合唱を十分に堪能したコンサートでした。人間の声っていいな。