クリスティアン・ティーレマン指揮
ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団
ブラームス バイオリン協奏曲
パガニーニ ヴェニチアの謝肉祭 (アンコール)
ベートーベン 交響曲第5番「運命」
ヴァーグナー 歌劇《タンホイザー》 序曲(アンコール)
ティーレマン・ミュンヘンフィルの来日は大阪では平日でかつ平凡なプログラム。一昔前なら、土日でブルックナーになっていたはずです。やっぱり関西の地盤沈下は著しいなあ。
会場の入りは平日にしては9割近くで、よく入っている方でしょう。今年は外来オケでめぼしいものが大阪にきてくれそうにないので、この公演に集中したのかもしれません。私はサイドの2階席に座るのは初めて。でもこの席はRFブロックの一番舞台寄りで、舞台側のブロックが一段低くなっているので、舞台がとてもよく見えます。
舞台に演奏者が出てきて、ティーレマンの登場。拍手も鳴り止まないうちに振り返って、指揮棒を降り始めました。両翼配置の第一バイオリンと第二バイオリンに時間差があるように思いましたが、それはだんだん解消されました。《マイスタージンガー》の前奏曲はさすがの迫力で、金管華やかに鳴り響きます。でも一番凄いと思ったのは弦。こんな明るく色彩豊かでかつ力強い弦を聴いたのは初めてです。
2曲目はレーピンをソリストに迎えたブラームスのバイオリン協奏曲。始めは、レーピンのバイオリンの音が小さくてオケにかき消されていましたが、そのうち楽器が暖まってきたのか、ギシギシと大きな音が響くようになりました。オケとの掛け合いはドラマティックで大変刺激的でした。やっぱりこの曲は協奏曲というより交響曲に近い。いい演奏だったと思います。
休憩後は「運命」。これは本当に凄かった。第一楽章の速いテンポといい、第3楽章から第4楽章への移行の遅さとその直後のドライブ感といい、演奏に強く引き込まれました。もちろん弦の音もすばらしい。「運命」は何度も聴いてきましたが、これまで一体何を聴いてきたんだろう?と思わせる、壮絶な演奏でした。これを聴けて本当によかった。
そして最後にアンコールで《タンホイザー》序曲。これも大変凄かった。極めて高い集中力で弦をうならせ、金管の咆哮も凄い。もう至福のひと時でした。
ティーレマンはミュンヘンフィルから離れますから、これからこの組み合わせはあまり聴けないかもしれません。それを考えたら、大変貴重な体験だったかもしれません。