いずみホール・オペラ2013
ヴェルディ生誕200年 シモン・ボッカネグラ
2013年6月22日(土)15:00~18:00
[会場]
いずみホール
[指揮]
河原忠行
[演出]
粟国淳
[配役]
シモン:堀内康雄
フィエスコ:花月真
アルビアーニ:青山貴
アメーリア:尾崎比佐子
アドルノ:松本薫平
[管弦楽]
カレッジオペラハウス管弦楽団
[合唱]
カレッジオペラハウス合唱団
[曲目]
ヴェルディ作曲 歌劇《シモン・ボッカネグラ》全曲
A「みなさん、こんにちは」
B「こんにちはー」
A「今日はいずみホールオペラ、ヴェルディの《シモン・ボッカネグラ》に来ています」
B「いずみホールってコンサート用のホールですよね?オペラの上演もするんですか?」
A「毎年やっているようですよ。オーケストラは舞台上にいますが、ステージとか客席を使ってオペラの雰囲気を出し、実際の舞台に近づける工夫をしているんですよ。以前、ロッシーニの《ランスへの旅》を聴いたときはとてもよかったですよ。」
B「ところで、《シモン・ボッカネグラ》って、あまり聞いたことがないんですが、どんなオペラなんですか?」
A「ちょっとややこしいんですけどね。簡単に言うと、シモン・ボッカネグラはジェノバの平民なんだけど、パオロの策略でジェノバの総督になっちゃった。でも恋仲だった貴族フィエスコの娘との恋はフィエスコの反対で破れ、2人の娘アメーリアもいなくなっちゃう。その子は25年後にやっと見つかるけれど、政敵アノルドと恋仲。シモンは裏切ったパオロを断罪したんだけど、パオロが仕込んだ毒を飲んじゃう。死ぬ前にフィエスコと和解し、総督の後継にアノルドを指名して息絶える、とまあ、そんな物語」
B「『フィエスコの反対』ぐらいで、眠くなっちゃいました。全然わかりません。」
A「そんなもんでしょうね。ちらしの裏に人物相関図があるから参考に。じゃあとにかく観てね」
(公演)
A「終わりましたね。どうでした?」
B「シモン役がむっちゃよかったですぅ。声ってあんなに響き渡るんですね。胸に染みこんできました。」
A「堀内さんは何度か聞いたけれど、いつも期待を裏切らないんですよ。声が明るくて朗々と光り輝くバリトン。声量もあるし、音程も正確。顔の表情がもう少し豊かでもいいかなとは思うけど。でもこの人がいてくれたので舞台がとっても引き締まりましたね。」
B「ほかの人はどうだったんですか?」
A「あまり言うのは何なんだけど、アメーリアの人はもう一つだと思いました。歌を型にはめているように歌っている感じがして、もっとしなやかに歌ってほしかった。声量、音程、声の質はよかったんですけどね。好みじゃありませんでした。」
B「好みじゃないって、オペラ歌手も顔が命なんですね!」
A「そっちの好みじゃない!他には、フィエスコの人は貴族なんだからもっと品格が欲しかった。アドルノの青山さんはいいんだけど、声を伸ばすときに波のようにうねるのがちょっとね。」
B「でも、パオロの青山さんはよかったですよね。」
A「そうそう、青山さんは深い深い暗闇のようなバスでした。こんなバスはなかなか聞けないんじゃないかな。ワーグナーなんかよさそう。めざせ、ヴォータン!」
B「ヴォータンってなんですか?」
A「あ、それは長くなるのでまたそのうち。そういえば、出番はほとんどありませんでしたが、アメーリアの侍女役の福島さんはVivava Opera Companyという小さなオペラ団が上演しているヘンデルのオペラで英雄の役を何度か歌ってます。彼女のヘンデルは結構好きなんですよ。今年も《ロデリンダ》の題名役を歌うようです。この団体のヘンデルシリーズは今年で終わりだそうで、残念です。」
B「突然、宣伝モードですね。誰も読んでませんから、効果ないですよ。」
A「まあ、最後らしいですから少しぐらいいいでしょ?。さて、次に、オケはどうでしたか」
B「決めの場面で、打楽器と金管が迫力満点なのがよかったですぅ」
A「うん、そこはよかった。やっぱり劇的なところはバシッと決めてくれると引き締まりますよね。でも、正直、オケは最初はどうなることかと思いました。金管だけ暴走。こんなばらばらで最後までいくのかとげんなりしましたが、1幕以降はまとまりました。でも弦は最後まで不満でした。こじんまりとまとまってしまい、ヴェルディならではのうねりがもう一つ。」
B「なかなか手厳しいですね。ところで指揮の人はどうして座ってたんですかね?」
A「勝手な想像ですが、舞台を見えやすくしていたとか」
B「ピットの浅いオペラ劇場って、指揮者が邪魔なことってありますよねー」
A「ええっと、次に演出。いかがでした?
B「パイプオルガンがあると楽だなーと思いました。」
A「そっちですか、まあ、照明で雰囲気を作りますから、ああいう反射しやすいものが壁にあると効果ありますね。特におどろおどろしいところとか、よく雰囲気出てました。コンサートホールでのオペラとしてはよくやっていたと思います。大きな装置を使えないですし。チェスを使った意味深なところはよくわからなかったなあ」
B「そういえば、チェスのルールなんてわからない、とか言ってませんでしたか?」
A「それを言うなよ。そうだよ、だからなんのこっちゃさっぱり。でもいいじゃん!」
B「開き直りましたねー。で、この公演は全体としてどう思ってますか?」
A「最初、声は音程が悪いし、オケもあの状態だし、プロローグで帰ろうかと思ったんですが、堀内さん登場から持ち直して、だんだんのってきて最後には思わず涙が出ました。シモンとフィエスコが和解する場面とか。やっぱりヴェルディっていいですね。合唱も出すぎず弱すぎずでいい感じ。演出は光の投射は雰囲気が出てよかったですが、それ以外は不要だなと思いました。演出がない方がもっと泣けたかも。」
B「泣きたいなら、いくらでも殴ってあげますよ」
A「そっちの泣くじゃない!もう一言いえば、びわ湖のオペラのレベルの高さをしみじみと感じたんですよね。関東からもいろんな人が来ていたようですが、今回の上演が関西のレベルと思ってほしくはないと思いました。」
B「びわ湖がいいと?だから滋賀県民は。身びいきなんて器が小さいですよ。」
A「ううう、それは認めるわ(泣 びわ湖ホールの方がお金もあるし、体制が整っているらしいから比較するのもちょっとね。また、《ランスへの旅》がすごく良かったから期待しすぎていたのかもしれません。それはともかく、泣けるオペラを聴けて良かったです。最初が悪くても、そのあとよくなるってことはオペラではよくあることですから、そういうことを頭に入れて最後まで聴く、これがオペラを楽しむコツの一つなのかもしれません。」
B「最後まで印象悪かったら立ち直れませんよねー」
A「そ、それは少ないと思います(ボソッ・・・ないわけじゃないけど)。だからオペラに行きましょう!」
B「ですね。皆さーん、がんばってオペラに行きましょーね!」