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双眼鏡

 

 一時期野鳥観察にはまったことがある。奈良公園を歩いているといろんな鳥がいて、誰が鳴いているのかを知りたくなったことから、それは始まる。


 双眼鏡を買って、野鳥のガイドブックを買って、双眼鏡と本とを見比べながら、いろんな鳥の名前と鳴き声を知った。おかげで鳴き声だけで何の鳥がいるかも分かるようになった。名前が分かるとかわいいもので、何故今まで気が付かなかったんだろうと、不思議に思った。人は、興味がなければそれに気が付かないことを知った。


 双眼鏡はまず野鳥観察入門用として人気のあった、Nikonの8×30EDである。いかにも双眼鏡と言った古風な風貌のゴツくさい双眼鏡である。でもすごくよく見える。質実剛健を地で行っている。


 次に買ったのは、CANONの10×30ISである。手振れ補正機能付きで発売当初から興味があった。大阪梅田のカメラ屋の年末セールで安く売っていたので、思わず買ってしまった。値札は38,000円だったが、「36,000にしときますから」と店員さんから言われた。そうか、値切るのが礼儀だったんだ。


 CANONの双眼鏡は、手振れ機能がすばらしく、マイクロバイブレーションと呼ばれる手の微振動を完全に排除するので、しっかり見える。しかし、何かもやがかかったような像を結ぶし、Nikonより重たいことがちょっと不満だった。


 ある日ヨーロッパに旅行に行った。私は、オペラグラスになり野鳥観察にも使える小さな双眼鏡が欲しかった。ヴィーンのシュテファン広場に面したところにあるアウトドア用品屋さんのウィンドウを見ていると、スワロフスキーのPOCKETという小さな双眼鏡を売っていた。ドアを開いて店内に入り、スワロフスキーとライカがあったので、見せてもらった。


 一度店の外に出てシュテファン寺院の塔の上を見ると、スワロフスキーのくっきりとした像に目を見張り、思わず声をあげた。双眼鏡で見ているとはとても思えなかったからである。次にライカを見せてもらったが、こちらもよく見えるが、スワロフスキーほどではなかった。値段は1.5倍違ったが、スワロフスキーを購入することにした。店員は"Good choice"と笑っていた。


 買ったのはスワロフスキーPOCKET8×20である。値段は45,000円ぐらい。日本では6~7万円で売っていた。色は黒。これならオペラグラスとして使えるし、野鳥観察もいい。使っていると、軽いのでマイクロバイブレーションが感じられず、手振れ補正機能も不要。見え方もnikonとほとんど同じで、暗くても周辺が暗くなる周辺減光もない。小さくて高性能、すばらしい双眼鏡である。


 結局スワロフスキーを買ってから、NikonとCANONは売り払ってしまった。全く不要になったからである。


 しばらくはオペラ公演と野鳥観察のどちらにも使っていたが、今は野鳥観察に行くことはほとんどなくなり、オペラ公演専用になった。オペラ鑑賞の分野では値段が高すぎるためか、友人に勧めて買った人以外、これまで同じ双眼鏡を使っている人を見ることはなかった。それが先日、知人の友人が緑を持っていらして、「これはいいよ」とおっしゃっていた。仲間が増えた。


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