letters-top return

なんちゃってモダニズム

 

 モダニズム建築は、機能主義という、機能が形を表しそれ自体が美しいものである、という思想から生まれた、極力装飾を排した建築である。日本では、昭和期以降の学校建築に代表されるように、平面な壁に四角い窓、内装も階段や壁にはモルタルのみのある意味殺風景な建物という印象が強い。


 こういう建築が生まれた経緯は、ヨーロッパの都市で、ゴシック建築やバロック建築の過剰なまでの装飾に満ちた建築に対するアンチテーゼと考えれば分かりやすい。装飾満ちた建物で一杯のヨーロッパの都市で、装飾のない建築があれば、それが特徴となって映えて見えるというわけだ。ただし、日本において、モダニズム建築が特に公共建築で広まったのは、デザイン上の問題よりコストの問題だと思う。


 さて、日本の建築も西洋の文化が入ってきて、独自にその様式を取り込みながらいろいろな建築が建てられた。辰野金吾のような明治の建築家が日本を代表する重厚な建築を建て、村野藤吾が多くのモダニズム建築を建てた。それに伴って、そういう様式を真似た建築も見られるようになった。


 前振りが長くなったが、これからが本題である。以下のような建築を見つけた。見るからに、モダニズム建築である。窓はアルミサッシになっているが、元は木枠だったのだろう。


modern


 しかし、実はこれはモダニズム建築ではない。横から見ると以下のようになる。


machiya


 ご覧の通り、町屋のファザードをモダニズム建築風に作り直したものである。個々の家は年月と共に修理が必要になり、使いやすいように修繕するのは当然である。そのときにファザードを作り変えるのはごく普通で、町屋の面影をとどめないものも多い。しかし、これほどまでに大きく形を変えたものを私は見たことがない。しかもしっかりしたモダニズム様式。まさに「なんちゃってモダニズム建築」、日本人の逞しさを感じさせる建築だと思う。