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パウル・クレー - 終わらないアトリエ

 

京都国立近代美術館でパウル・クレー展を見た。

連休初日でそれなりに人はいたが、ゆっくり見ることができた。会場に修学旅行の団体が入ってきたのにはビックリしたが、一部の人を除いてほぼ素通り。まあ、当然か。

だいたい、大変直裁な性的描写もあることだし。

さて、今回の展覧会は180点ほどの絵画を展示する大規模なもの。じっくり見ていると疲れるのは分かっているのだが、面白い絵が一杯あるので、どうしてもじっくり見てしまう。

気に入ったのは、以下。左からカタログ番号、題名、(制作年、クレー自信による作品番号)

022-R 花開いて(1934年,199)

暗い周囲の真ん中から少し左にずれたところに明るいモザイク。暗い中に光るモザイクが印象的でなんと美しいことよ。

061 バウハウス展のための絵葉書「崇高な面」(1923年,47)

かわいらしく、色使いも明るく柔らかい。思わず微笑んでしまう。

065 蛾の踊り(1923年,124)

モザイクをバックに線描の蛾らしきものが舞う。二段のモザイクの上にグロテスクな線画が調和する。それがまたなんとも美しい。

075 地獄の公園:「風に向かって」(1939年,248)

単純な線で描いたすがすがしい線画。私も雲に乗って飛んでいきたくなる。

145 鉛直(1925年,233)

すごい。上下のT字が向かい合い、その間に紫の靄がかかる。線の勢いが強く、とてつもない緊張感。目を奪われるとはこのことだろう。

163 襲われた場所(1922年,109)

下半分にある美しい場所に上から黒い矢印が襲いかかろうとしている。平和な世界に警鈴を鳴らす恐ろしい絵。

177 嘆き悲しんで(1934年,8)

細かなモザイクの中に悲しむ人がいる。クレーがドイツからスイスに亡命した時期。これはクレー自身の心のうちなのだろうか?周りのモザイクは暗く、内側は光に満ちて明るい。涙の場所はさらに明るい。明るさが悲しみを誘い、涙があふれて止まらない。

179 教会(1940年,234)

最晩年の太く力強い黒い線のマトリックスで描いた赤い教会。力強さにまさに圧倒されて言葉も出ない。

他にもすごい絵があったと思うが、語りつくせない。前回に行った上村松園展もすごくよかったが、今回は、もう別世界に飛んだ感じがする。

こういう展覧会を見ると、ベルンのパウル・クレー・センターに行きたくなる。今回の展示会では、天使系がなかったので、そういうのもまとめてみたいと思った。

それにしても、クレーのエネルギーはすごい。ナチスによって、それがそがれたのが悲しいけれど、それでも新しい道を切り開いている。

私は芸術家は年を追うごとに洗練され単純化されると思う。しかし、クレーは単純化の中に力を加えたのだと感じた。どんな逆境にあっても彼の破壊力は留まることはなかった。

一生を精一杯生きる。

それが人間にとって一番大切なのかもしれない。