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1986年の中国旅行 11/11

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11.成都


 成都に降り立ったとたん、体中がかゆくなった。今までは乾燥したラサの地で気にならなかったからだの汚れが、湿度の高い成都に着いて一気に皮膚を刺激したのである。そういえば、ラサにいた一週間一度しかシャワーを浴びてなかった。


 成都の宿は、最初は軍が作った地下シェルターをホテルに改造した場所だったが、湿気が篭って大変つらい。それで翌日から、国営ホテルに変更した。


 成都になるとラサとは比べ物にならないほどの外国人がいて、日本人も多かった。面白いもので、日本人が少ないと日本人らしい人を見かけるとすぐに声をかけるし、かけてくるのに、日本人が多過ぎると声をかけない。ラサは声をかける街、成都は声をかけない街である。


 成都ではまず都江堰に行った。山から流れ出る川を3つの川に分流し、四川盆地を潤したという古い堰である。バスで30分で都江堰に着き、山の上から眺めたりした。3つに分流しているという違いはあるが、吉野川の第十堰に通じるものがあるように感じた。


 成都では何を食べてもうまかった。その辺の露天で食べてもうまいし、高級料理店もうまい。一番驚いたのは麻婆豆腐である。陳麻婆豆腐店という名店に行き、麻婆豆腐とご飯を頼むと、大量の丼飯に小皿のマーボー豆腐で、これでご飯を全部食べられるのかと思った。でもそれは杞憂だった。


 麻婆豆腐は大変うまいのだが、日本では想像できないほど辛く、結局、ご飯が先になくなった。それでもフーフー言いながら食べた。地元の人はこれにさらに一味唐辛子をかけて食べるのである。辛さに対する感覚が違うのだろうか。


 他に3日間の滞在中にいろいろ食べたが、まずいものや食べられないものにあたることはなかった。これは、今回の中国旅行で、唯一の場所である。さすが四川料理といわれるだけあると思った。


12.上海、帰国


 成都を飛行機で立ち上海へ戻った。このときの飛行機もボーイング707だった。上海虹橋空港に着いたが、今回はちゃんとバスに乗って市内に行った。上海の宿泊先は最初と同じ浦江飯店である。今回も宿泊拒否に遭うことはなかった。


飛行機


 中国も最後だから、美味しいものを食べようと、いろんなところに行った。街角の麺類屋、屋台の肉まん屋、評判の小龍包屋、朝粥店など。最後は高級料理店。でも高級料理店では半分ぐらいは口に合わない。それに比べると街中の小さな汚い店のほうが断然うまい。


 家族にお土産を買って、帰国の日が来た。飛行機に乗り、機内食でおにぎりがでて、これを食べた時に、思わず涙が出た。中国の米は炊くのではなく蒸す。だから同じようなご飯は最初からあきらめていた。一ヶ月中国にいて、一ヶ月ぶりに食べる日本風のおにぎり。このときの感激は今でも忘れられない。

 
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