1986年の中国旅行 10/11
翌日はポタラ宮に上った。高度が高いので上るのには往生したが、内部も公開されているので、苦労した甲斐があった。内部は小さな部屋がいっぱいあって、見るのも大変だったが、なかでも、ろうそくがたくさん並んでいた広間は妖艶な美しさをたたえていた。中は大変広くかつ複雑で迷いそうになったが、なんとか外部に通じる通路を見つ けて外に出た。
ラサはチベット仏教の聖地である。ポタラ宮も聖地の証だが、ジョカンという寺院があり、チベット仏教教徒にはこちらのほうが聖地である。寺院の中で護摩をたき、ろうそくを立て、頭をつけて祈る。また、その周囲も六角街といって、六角形の形の道になっていて、時計回りに回るとご利益があると言われる。私も六角街を時計回りに何度も回った。チベット仏教徒はマニ車というものを持ち、時計回りにまわしながら歩いている。これは中に経典が入っていて、時計回りに一回まわすとその経典を唱えたのと同じことになるらしい。また、なかには、頭をつけて祈りながら前に進む五体投地をしながら回っている人もいる。にぎやかさでは、ラサ随一の場所である。
また翌日、自転車を借りてラサの街をうろうろしてきた。ラサの町はチベット族の住む地域と漢民族の住む地域がきれいに分かれている。当時は漢民族は少なく、漢民族の地域は静かだった。チベット族が漢民族の地域で露天を開いていることもあった。露天の中で歯医者があったのには大変驚いた。
チベット族の人は皆笑顔で接してくれたが、何故か女性ばかりである。聞いた話によると、働くのは女性だけで、男性は昼間から酒を飲んでいるらしい。いろんなところに白いテントがあり、それが酒屋らしいというので、私も白いテントに入ってみた。
そこでは、おばさんが、男性二人の相手をしていた。とりあえず甕に入っているものをたのむと、麦のどぶろくだった。ビールに麦の雑実を加えたものと言えばいいだろうか。結構さわやかだが、ビールの喉越しはない。結構アルコール度数が高いと見た。これを何杯も飲んでしまうと、自転車に乗れなくなるし、話も出来ないので、早々に引き上げた。
食べ物ではヤクバーガーというものもあった。いろいろ情報を教えてくれた日本人が泊まったホテルの食堂にあるという。半分食べさせてもらった。香ばしくて結構美味しかった。
9.ラサを去る
ラサは楽しくて、天気もよくて、さわやかで、天国のようだった。その天国を後にする日が来た。飛行機で成都までいくのだが、飛行機に乗るには、その前日に飛行場近くの宿舎で宿泊しないといけないらしい。それで、前日の午後、飛行場行きのバスが出るところに行くとたくさんの人でごった返していた。バスが来ると、皆バスに乗ろうとひしめき合っていた。私も負けずになんとかバスに乗ることが出来た。飛行場はラサの南にあり、バスはラサ川沿いを走っていた。3時間ぐらい走って、やっと宿舎に着いた。夕食をとろうと食堂に行くと、今や店を閉めるところで、なんとか食事を摂らせてもらった。
翌朝、飛行場へ行くバスに乗り、飛行場から成都行きの飛行機に乗った。飛行機はボーイング707だった。日本ではその当時でも飛んでなかったと思う。窓際に座って、山の景色を見た。だんだん雪がなくなって、平地になり成都に降りた。