オーケストラアンサンブル金沢 大阪特別公演 2/2
ですが、「菩提樹」あたりからプライの声もよくなり、プライのみを照らすライティングのためか、歌に集中できオーケストラの違和感もなくなりシューベルトの世界にどんどん引き込まれていきました。
で、曲に集中できる雰囲気作りが利いたのか時間が経つのも早く、気が付くといつのまにかプログラムも後半になっていて、このような早い時間の経過とともに管弦楽の伴奏のよさが目立つようになってきました。「鴉」、「嵐の朝」などは歌もさる事ながら伴奏の激しさといったらなく、交響曲のように歌と伴奏が融合したり、拮抗したりして、大きな広がりを持って聴き手に向かって押し寄せてくるという感じでした。否応なく曲を全身で受け止めることになり、迫力に完全に圧倒されてしまった。
そして、ライアー回しが終わり音が消えると、じーんと来て涙がじんわりと出てきて止まらない。しばらく拍手もできませんでした。曲の終わりで指揮者の岩城宏之さんは腕を止めたまま動かないのですが、拍手が出てそれが止まらず、拍手の中で腕を下げました。この時ほど周りの拍手をうらんだことはありません。
これまで「冬の旅」は生では1度だけ聴いたことがある程度でしたのでこれまで気が付かなかっただけかもしれませんが、この伴奏の音楽ってこんなにすばらしいものだったのかと今更ながらに思ってしまいました。恐らく鈴木行一さんの編曲が大変すばらしいからなのでしょうけれど、シューベルトの歌曲の世界を非常にわかりやすく、上手に、感動的に表現できていたのではないかと思います。
こんな新しい発見ができたコンサートは最近では経験がありません。このCDが出たら(もう出ているのかもしれませんが)絶対に買うでしょう。