ヴィーン国立歌劇場公演《パルシファル》 3/3
そのMEIERの本領が発揮されたのが3場です。パルシファルにキスをして彼がアンフォルタスの苦悩に共感すると彼を引き止めようとするクンドリーの絶叫が始まりました。すさまじいまでの絶叫、圧倒的な存在感!
私の席は前述の通り舞台に近く、しかもMEIERは私のすぐ目の前に座って歌い、次から次に繰り出される彼女の絶叫の音圧を直接受けまさに放心状態です。まるで自分がパルシファルになってクンドリーと対決しているかのよう。
私はかつてベルリン国立歌劇場の引越し公演でMEIERのジークリンデの感想を「彼女はジークリンデ役にぴったりである」旨の文章を書きましたが、あのときもすばらしかったですが、今回のクンドリーはそれを完全に凌駕しまるで乗り移ったように役にはまっていました。
MEIERの才能、能力はここで十二分に発揮され、その本領を思い知らされた感じです。それにしてもあの小さな体からこのような神懸かり的な声が出るのか不思議でなりません。しかし、この役、このような場面は2幕後半のほんのわずかだけなのですね。もうちょっと聴いていたかった。
3幕は前奏曲から最後までゆっくりと迫力のある演奏と歌唱ですばらしい舞台でした。RYDLのグルネマンツは年老いてはいますが気高く、パルシファルの ELMINGも引越し公演のときとは違い十分にその美声を披露してくれました。オケも最高によかった。でも、やっぱり2幕のMEIERの凄さを思うと、どうしても影が薄くなってしまい、あれがすべてだったのではないかと思えてしまう、そんな舞台でした。