新国立劇場 歌劇《軍人たち》 2/3
《軍人たち》を新国立劇場で上演すると聞いて、行きたくて仕方ありませんでした。でも、ヴィリー・デッカーの演出と聞き、私が、過去、ドレスデンで見たものと同じものだったらどうしよう、と思いました。同じ演出で見るのももったいないし、東京まで見に行くのだから、違う演出で見たいですよね。
でも、新聞記事で、若杉さんが「《軍人たち》を上演するために新国の芸術監督になったと言っても過言ではない」と気合をもってこのプロダクションに臨んでいるのを読み、違う演出ならいいなあと一縷の望みを持って東京へ出かけました。
しかし残念ながら、基本的に同じ演出でした。幕が開いてわかりましたが、パンフレットにも「ドレスデンでの基本コンセプト」と書いてありました。指揮者の登場がなく突然音が鳴り始めるのは、ドレスデンと同様。でも、音の迫力、テンポが全く違いました。ドレスデンでは、これでもかという音の洪水に圧倒されたのに対し、若杉さんの指揮は、淡々と音を出していくだけ。ドレスデンであれだけ咆哮した金管も、やわらかく、鈍重で、狐につままれた感じでした。
まあ、淡々と指揮をしている若杉さんですが、それでも、十分このオペラの迫力を堪能できるのですから、作曲者が凄いのでしょう。演出も、見たことのある場面ばかりですが、人の動きなど、この劇場にしては大変しっかりしていて、このオペラの醍醐味を十分に味わえました。
今回、活動休止中のヴィリー・デッカーは当然来日してませんが、再演演出をしマイシェ・フンメルは、私がドレスデンで見たときでも再演演出をしています。この演出のドレスデン初演は1995年2月2日で、私が見たのは1998年3月29日、18回目の再演です。フンメルはこのプロダクションの生き字引みたいな人なのでしょう。
演出は、赤い軍人、灰色のシュトルツィウス、黄色の伯爵とマリーがいろいろな色に染まろうとしますが、結果的に軍人たちの手で血塗られた娼婦にされ、さらに凄いのは、舞台もそれとともに、縦に傾いて、マリーが這い上がろうともがくというものです。ダイナミックで視覚的に明白。私がドレスデンで見たときは音楽はもちろん視覚的効果に圧倒され、当時はこれが最新の舞台なのかと胸の高鳴りを抑えられなかったことを覚えています