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新国立劇場 歌劇《軍人たち》 3/3

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 今回、演出はすばらしく、10年前から全く色あせてないと思いましたが、舞台の縦の回転についてはどう感じるのでしょうか?今だと当たり前に見えるのかなあ。


 なお、演出上、ドレスデンと明らかに違ったのは以下の2点。
・ラ・ロッシュ伯爵夫人が舞台を去るときの背景は赤でなく黄色。
・最後の最後、白い集団の中で、マリーの周りから人が離れていく場面で、マリーは純白のシミーズを着ていたが、血塗られていた。


 私は、ドレスデンでの演出のほうが、よかったと思います。ほかに、舞台自体が、ドレスデンのほうが小さかったような気がします。


歌手は、皆さん健闘していました。マリーのルキアネッツは、途中息切れしていたような感じでしたが、最初から最後まで、ほとんど歌い続けてがんばってました。今回一番よかったと思うのは、シュトルツィウスのオテッリです。しっかりとした声を出して迫力がありました。 今回、結局一番問題だったは、若杉さんの指揮でしたが、オケはしっかりしていたと思います。迫力が足りないところもありましたが、これも指揮の問題のような気がします。


 あと、問題は音響効果。前方と後方にスピーカーを置いて、最後に軍靴の音と様々な叫び声を放送していましたが、ちょっと単純すぎて、十分な迫力を味わえませんでした。ドレスデンでは、もっといろんなところにスピーカーを置いて、いろんな方向から音が聞こえ、音の迫力と目が回るような幻覚にくらくらしたのを覚えています。


 音源は同じだろうに、ここまで差が出るのは何故なんでしょうね。費用の問題でしょうかねえ?まあ、両方を聞いた人間の感想なので、そんな人はほとんどいないでしょうから関係ないかもしれませんが。


 とまあ、いろいろ文句を並べて来ましたけれど、 私は、この公演を東京まで見に行って十分満足しました。やはり、なかなか味わえない演目ですし、これを日本で日本語字幕付きで楽しめるなんて、まずありえないと思っていました。それを、指揮・音響に不満はあるとしても、しっかりした再演監督の下すばらしい舞台を堪能できたのですから、当然のことです。


 ドレスデンで見たとき、もう二度と見ることがないだろうなと思った作品ですからね。もう一度接することができただけで満足です。


 新国立劇場も、これからも、先鋭で意欲的な舞台の実現に努力して欲しいですね。ゼフィレリだけじゃなくて。

 
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