新国立劇場 R.シュトラウス 歌劇《影のない女》 1/3
歌劇《影のない女》
衣装,照明
皇后 エミリー・マギー
乳母 ジェーン・ヘンシェル
バラク ラルフ・ルーカス
バラクの妻 ステファニー・フリーデ
使者 平野和
鷹の声 大隅智佳子
まず断っておくが、この公演の演出に私は激怒した。
私にとっては2年半ぶりの東京。R.シュトラウスの《影のない女》という余り見る機会のないオペラなら何とか見たいと思って遠路出掛けた。
《影のない女》はモーツァルトの歌劇《魔笛》をイメージしたオペラだそうで、霊界の王カイコバート(出演せず)はザラストロ、皇帝はタミーノ、 皇后はパミーナ、バラクはパパゲーノ、バラクの妻はパパゲーナ、乳母は夜の女王に相当すると考えれば納得できる。しかし、話は全然違うし、 要求される管弦楽や歌唱はヴァーグナーに匹敵するかそれ以上のパワーが求められる。これを本当に新国立劇場がうまく上演できるのか 大変心配だった。
物語の大筋は、皇后が影のないままだと3日後に霊界に連れ戻され皇帝は石になると告げられ、皇后と乳母が人間界に下りる。 不仲から子供をつくることをあきらめたバラクの妻から影を奪い取ろうとするが、皇后がそれを拒絶したので、皇帝は石になる。 しかし、皇后がカイコバートに他人の幸福を奪ってでも影を得ることはできないと懇願し、それが認められて 皇帝は元の姿に戻り、バラク夫婦も元通り仲良くなる、というもの。
今回の公演は、まず歌手がよかった。一番存在感があったのは乳母役のヘンシェル。抜くところでは抜いて、ここぞというところで大迫力。 ベテランはどうすれば客の受けがよいか知り尽くしている感じ。次は、皇后役のマギー。この人はもっと軽い役を歌う人と思っていたが、 こういう激しい役でも結構いけるとわかった。強い声でも声が美しく、立ち姿も美しい。バラクの妻役のフリーデも絶叫調だが声量がすごい。 オケの大音響を突き抜ける声を聴くとそれだけで酔いしれてしまう。 バラク役のルーカスも音程が安定していてドスも効いていた。皇帝役のバーバは不安定でちょっと残念。使者の平野さんもりりしい声だし、 鷹の声の大隅さんも美しい声で満足。
次によかったのは管弦楽。余り期待してなかったが、R.シュトラウスの官能的な音をしっかり出していて感激した。この音で、 大迫力の演奏だったから、十分にR.シュトラウスの世界に浸ることができた。 日本のオケでこれだけのことができるのだから、ドレスデンなどで聴けたらどれだけすごいのだろうか?
指揮は、ぬるいところが結構あった。それも、歌手が歌うところなので、歌手が大変そうに思えた。でもオケからR.シュトラウスの音を 引き出したことは評価されていい。