トリノ王立歌劇場 ヴェルディ 歌劇《椿姫》 3/3
最後は、アルフレッドもジョルジュもいなくなり舞台上はヴィオレッタひとりだけ。たったひとり残されて孤独のうちに息絶えて、これが自分の墓石と言いたげにシーツの一つを引き剥がして墓石を現わにした後、最後の音がして舞台が暗転。
終了するともう会場は大喝采。カーテンコールの拍手が止むことがないのではないかと思えるほどすごい反響だった。私もずっと拍手してブラボーを叫んだ。
なんといってもデセイの歌が一番すごかった。ヴィオレッタにしては少し細い声だなと思ったけれど、強くたくましく、情感のほとばしる歌。舞台を走りまわり、横になったりするのにどうしてあんな歌が歌えるのかとても不思議。一幕と三幕のアリアで聴いたことのない2番があってあれっ?と思った。
次にジョルジュのナウリ。気高く格調高い歌を朗々を歌って喝采を呼んだ。彼の本気をずっしりと味わった。ポレンザーニは声はよかったが、相手がデセイでは感情表現が弱い点が目立つ。
合唱は秀逸。舞台上の合唱では足りずに、オケピットに合唱を入れて歌わせていた。オケはあまり期待してなかったけれど、反してすごくよかった。難を言えば時々木管が変な音を出していたことか。ノセダの指揮は大変素晴らしい。ここぞというときにはオケを締め上げてドライブし煽る。でも歌手が主役の時には出しゃばらない。オケにしても合唱にしてもヴェルディのオペラとなると気合の入り方が違うのではないか?
ペリの演出も大変素晴らしかった。舞台を全て墓地の上で進め、最初から最後まで死の予感の中で舞台を作り上げていた。病院で昔の楽しい時代を夢見たり、後半では仲間から見放されたて、孤独にひとり墓に入る。これ以上悲しい結末があるのか?そしてそれを回想するアルフレッドの絶望はどれだけ深かったのだろうか。
それにしても、歌手、合唱、オケ、演出と大変充実したオペラだった。こんなオペラ見ることができたことに感謝したい気持ちでいっぱいだ。