イスラエルフィルハーモニー管弦楽団 2/3
まあ、こういう派手さはメータの得意とするところなんでしょうけど、もうちょっとおさえてほしかったです。
とまあ、こんな風に第3楽章まではいいところと悪いところが同居する平凡とは言わないまでも、そんなに期待したほどでもないという印象で、期待が大きすぎたかなと反省し始めたのですが、第4楽章でがらっと変わってしまいました。
第4楽章の演奏の開始でメータはそれまでと違って客席が十分に静かになるまで棒を振りませんでした。棒が動いて音が鳴り出したとたん、何という弦の響きでしょう、ぴったりとそろった弦がうねるように響き始めました。もう、官能的なまでの弦のうねりと、それに伴う強い緊張感に、すぐに圧倒されてしまいました。弦だけでなく木管、金管も弦に負けず力を振り絞り、マーラーのあの大宇宙を構築していきました。いつのまにか握り締めた手は汗で濡れ、体全体も硬直して全身で演奏と格闘していました。
そして最後の弦の弱音が続くところでは呼吸さえもままならず、緊張も絶頂に達した時、静かに弦の音が消え、そうして無音の状態がしばらく続きました。メータは手を止めたまま動きません。
そしてゆっくりと手を下ろしていき、下がりきったところで、ふっと手の力が緩むのが見えた瞬間、大喝采が湧き起こりました。私にとって久々に味わう熱狂的感激でした。
先に読んだ新聞では吉田秀和さんは「つかれきっているくせに、つぎつぎと言葉が出てとまらないほど興奮してしまった」と書かれていましたが、まさにそのとおり、何かを言わずに居れない感じで、帰りの電車でかみさんとずっと話をしていました。