グスタフ・レオンハルト チェンバロ・リサイタル
J.C.バッハ:プレリューディウム ハ長調
フィッシャー:シャコンヌ ト短調
デュフリ:ロンドー、ラ・ダマンズィ、純真無垢な娘、
ラ・ミレティーナ、メヌエット、レ・グラース
ラモー:コンセール第5番
J.S.バッハ:プレリュードとフーガ 第9番 ホ長調
(平均律クラヴィーア曲集第二巻より)
J.S.バッハ:組曲ホ短調「ラウテンヴェルクのための」
J.S.バッハ:アリアと変奏
(アンコール)
J.S.バッハ:ラルゴ(バイオリンソナタ ハ長調より)
私がレオンハルトのチェンバロを聴くのは初めて。老齢なレオンハルトはすっと立って現れ右手に手袋をしていた。チェンバロにも姿勢よくすわってきりっと楽譜を見ていた。
最初のルルーでは、音が硬かったけれど、だんだん緩んできてJ.C.バッハぐらいから、楽器から輝くような綺麗な音がした。彼の音楽は、チェンバロなのにタッチが柔らかく、リズムは微妙に揺れて、そのゆれが曲に絶妙にマッチして聴いていてとても気持ちよかった。
ほとんど目をつぶって聴いていた。集中して聴いていたかった。でも、時々、天井を見上げ、チェンバロから紡ぎだされる光り輝く音が、天井にすうっと上り響いて消えてゆくのを感じた。
静かな曲の落ち着きもいいが、やっぱりチェンバロの醍醐味は、超絶技巧。すごく早いパッセージをアルペシオで疾走するように演奏する。デュフリの一曲(曲名は見てなかった)とJ.S.バッハの組曲ホ短調のサラバンドで大興奮。あのテンポで、あれだけ指が動くものだと感動した。
前半最後と後半にJ.S.バッハ。緩やかな揺らぎと細い音で、バッハの骨格は残していたものの、とても優雅で美しい演奏だった。年齢が年齢だけに昔の四角四面で硬いバッハを予想していたけれど、いい意味で期待を裏切ってくれた。
しかし、演奏中は終始硬い表情を変えず、頭の位置も変えず、しっかり固定されたした姿勢でチェンバロに向かっていた。これを見ると、音楽の表情は柔らかく揺らぎを含んでいても、演奏する形はいかにもドイツ的な質実剛健を貫いているんだなと思った。
大変気持ちのいい演奏を一杯味わえた。聴衆も静かで演奏に引き込まれているような気がした。いい演奏に、いい聴衆。やっぱりこれが一番。帰り道もにこにこほんわか。安らかな思いがしみじみと残る、ほんとうにいい演奏会だった。