フィリップ・ジャルスキー アンサンブル・アルタセルセ リサイタル
モテット《闇の恐れのあまりにも長く》
ヴィオラダモーレとリュートのための協奏曲
《ニシ・ドミニス》(主が家を建てたまわずは)
(休憩)
歌劇《オルランド・フィント・パッツォ》より
「何を見るまなざしにも」
歌劇《ウティカのカトーネ》より
「もしあなたの顔に吹き寄せるのを感じたなら」
ヴァイオリン協奏曲「グロッソ・モーグル」
歌劇《オルランド・フィント・パッツォ》より
「何を見るまなざしにも」
歌劇《ジュスティーノ》より
「この喜びをもって会おう」
歌劇《勝利のユディタ》より
「松明と蛇で身を護り」
(アンコール)
ポルポラ 歌劇《ポリフェーモ》より
「偉大なるジュピター」
歌劇《ジュスティーノ》より
「この胸に感じる涙の雨の中」
ジャルスキーとアンサンブル・アルタセルセのリサイタル。ジャルスキーの来日は3回目だが、1回目は名古屋まで聴きに行ったのに、前回は大阪に来てくれたのにいかれなかった。今回は必ず行くぞと気合を入れていた。
チケットを購入するときは1か月前でまだたくさん残っているみたいで、どうなることかと心配していたけれど、開演前に会場を見渡すと、ほとんど一杯。客が入らないんじゃないかという心配は杞憂だった。
前半の宗教曲はどちらも長く、歌い続けるのは大変だけれど、あるときは力強く、あるときは優しく柔らかに歌い、最後まで余裕がある。そして、ノンビブラートで同じ音を長く伸ばす。音程が乱れず、震えの全くない極めてまっすぐで美しい声。うっとりするしかない。でも、いずみホールの残響の長さにより、残響の震えが声に重なってしまい、音を不明確にする。これが少し残念だった。
後半のオペラアリアは4曲だが、1曲目と4曲目は激しい歌、2曲目と3曲目にしっとりした歌を歌った。1曲目は少し疲れが見えたが、それ以降は美しい声を会場に響かせて十二分に楽しませてくれた。
そして、プログラム最後は《勝利のユディタ》の「松明と蛇で身を守り」のアリア。これを歌ってくれるのを知らなかったので、プログラムを見たときにガッツポーズ。彼はこの早いパッセージが続く力強いアリアを完璧に歌いきった。最初からもうめろめろ。終わってからブラボー!もう最高の気分。
ジャルスキーの歌は大満足。やっぱりいいなあ。うまい。
一方、オケはもう少し何とかならないか。ジャルスキーが歌っているときは気にならないけれど、オケだけのときは、5人いるバイオリンのピッチがばらばらだし、ボウイングが強引なのか、ギシギシした不快な音を出す。2曲ともコンマスがソリストだったが、やはりピッチが合わない。後半のバイオリン協奏曲にいたっては、ソリストがボロボロで、特に第3楽章の長大な独奏では、ビッチの合わない不快な音が永遠に続くのかと思うほどだった。もう拷問である。
これにブラボーが出るから不思議だ。テクニックは認めるが。
とまあ、オケとコンマスで悲惨な思いをしたが、ジャルスキーの歌はすばらしかった。甘いようで男臭くもある不思議な声。力強くて、弱音もばっちり。なんといっても音程が全く乱れない。カウンターテナーでこれというのはもう信じられないぐらい凄いことだと思う。
また是非とも来日して、楽しませて欲しいと思ったリサイタルだった。