クリスティーネ・シェーファー ソプラノリサイタル
ヘンリーパーセル/ジョージ・クラム 歌曲の夕べ
束の間のしらべ
音楽が愛の糧ならば
ああ!恋とはなんと甘い喜び
祝婚歌
薔薇の華より甘く
ジョージ・クラム
夜~3つの初期の歌Ⅰ
ヘンリー・パーセル
薔薇色のすみかから
我が苦悩のすべて
ジョージ・クラム
忘れよう~3つの初期の歌Ⅱ
ヘンリー・パーセル
祭壇に王冠を
ジョージ・クラム
風の哀歌~3つの初期の歌Ⅲ
ヘンリー・パーセル
ディドの悲しみの歌
「べリンダ、手を・・・、この身が地中に葬られたら」
(休憩)
ジョージ・クラム 幻影
(アンコール4曲)
名古屋まで行ってクリスティーネ・シューファーのリサイタルを聴いてきた。
会場は中電電気文化会館・ザ・コンサートホール。ホールの中身はリニューアルされているのか、最新の設備だが、地下にあり、一階からのアクセスは大型エレベータ2台と4階分の階段しかない。395席だとこれで間に合うのかな。
さて、リサイタルだが、前半も後半も最後まで拍手をするなという。前半はパーセルとクラムを合わせて、最初に愛を悟り、舞い上がって、最後は愛ゆえに死んでいくというストーリー。
前半ははっきり言って感心できなかった。音は外すは、フレーズが切れるところでうまく処理できないは、装飾音をうまく歌えないは。でも、そういう技術的なところより、何よりも単調で感情が感じられない。色も艶もない。声はきれいなんだけど、こんな人なのか?と期待外れだったか、と思った。
でも、前半の終わりになって、歌の表情が劇的になり、声も性格的になって、楽しめるようになってきた。リサイタルにありがちな後半全開タイプなのかもしれない。
しかし、休憩後のクラムには大変興奮した。こちらも愛の変遷がテーマだが、表現が全く違う。ピアノは直接弦やハンマーを叩き、ピアノの木部も叩く。激しい伴奏もあれば、静かな伴奏もある。その中でシェーファーは変幻自在に声を操り、テクニックを駆使していろんな表現で歌いまくる。ピアノの音が全開で歌も全開のところなんてまるでピアノと歌の格闘。アルバン・ベルクのオペラ《ルル》を想起させるような激しい歌もあった。緊張しっぱなしの25分。これがあるから前半を抑えていたのかと思ったぐらいだ。
ところで、シェーファーもすごかったが、伴奏のシュナイダーも素晴らしかった。ピアノの音がきらびやかで太く、音が濁らない。こんな美しくもすばらしいピアノ伴奏を聴いたことがない。その辺の歌手なら完全に伴奏に負けるだろう。いや、このくらいの人なら歌手のレベルに合わせて引き分けるのかもしれない。
今回は、クリスティーネ・シェーファーという稀有な歌手を得て伴奏者が全力で立ち向かったのだと思う。だから歌が生きる。リサイタルは歌とピアノのコラボレーションであり、格闘技なんだと思った。
今回のコンサートは最初こそ不満だったが、後半は素晴らしかった。名古屋まで出かけて本当に良かった。
ちなみに、アンコールは4曲。すべてドイツ語の歌曲だったと思う。パーセルもクラムも英語だから、発音に苦労していた感じはあったが、アンコールは安心して聴けた。特に一曲目は素晴らしくて背筋に電気が走った。やっぱり母国語の歌が一番なんだろうな。