サンドリーヌ・ピオー ソプラノリサイタル
水のほとりで
月の光
ゆりかご
夢のあとに
メンデルスゾーン
夜の歌
新たなる愛
眠れぬ瞳に宿る光
魔女の歌、もうひとつの五月の歌
ショーソン
過ぎ去りし愛
魅惑と魔法の森で
時間
R.シュトラウス
あした
ひめごと
夜
セレナーデ
(休憩)
ブーショ
絞首台の歌
月での出来事
カワカマス
真夜中のねずみ
水
絞首台の子供の子守歌
プーランク
モンパルナス
ハイドパーク
C,セーの歌
華やかな宴
ブリテン
柳の園
なぐさめる人もなく
彷徨いつつ思う
(アンコール3曲)
名古屋の電気文化会館ザ・コンサートホールで、サンドリーヌ・ピオーのリサイタルを聴いた。
ピオーはフランスを代表する歌手なのに、日本では知名度がほとんどないと思う。それは、ヘンデルやラモーなどバロックオペラを主として歌っているからで、日本では、この手のオペラに触れる機会は少ないから、この人の歌を聴く機会が少なく、結果として、この人の凄さを知る人は少ないだろう。
私も生で聴くのは初めてで、関西での公演もなく、名古屋まで出かけた。曲は、古楽ではなく、フォーレ、メンデルスゾーン、ショーソン、R.シュトラウス、ブーショ、プ―ランク、ブリテン。
最初のフォーレでは少し声が固かったが、そのうちのびやかになり、メンデルスゾーンからは全開モード。ノンビブラートでよく伸びる声は透明で美しいく、かつ力強く太い。音程は極めて正確、細やかな心遣いが感じられる気持ちの良い歌。
伴奏のピアノも美しかった。特に各曲の最後の音のが小さく消えていく美しさと言ったらなかった。最後にピアノの鍵盤から手を離すときの細やかな心づかい。歌もピアノも美しく、耳が浄化されていく。
一番よかったのは、後半のプーランクとブリテン。プーランクはフランス語の発音が極めて美しく、ふくらみがあり、暖かい。フランス人が歌うフランス歌曲の素晴らしさを再認識した。
ブリテンは、アカペラで歌う、響き渡る声に圧倒される。でも、一番すごいのは、歌の中に挿入される無音の時。声の残響が響き渡り、緩やかに消えていく。聴衆も息をのむように静まり返って、音が極めて小さくなるまで残響が残る。今まで体験したことのない美しい時間が生まれる。この残響の時間が来るたびに私の心まで澄み切ったように感じた。
アンコールは三曲。プーランクとR.シュトラウス。最後になると、涙があふれて、拍手もできなくて、声も出なかった。いつもなら盛大に拍手して、ブラボーを飛ばすのに、そんなことをするのがもったいなくて、何もできなかった。
今回は名古屋まで遠出したけれど、行ってよかったとしみじみ感じたリサイタルだった。またの来日を強く望む。今度は是非とも関西にも来てほしい。