マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団演奏会
交響曲第1番
交響曲第8番
交響曲第5番
京都で、マリス・ヤンソンス指バイエルン放送交響楽団の演奏会を聴いた。
プログラムはベートーベンの交響曲1番、8番、5番。東京でティクルスをやるからこんなプログラムなんだろう。
舞台に現れたヤンソンスを見て、この人も歳をとったな、最初に思った。でも、出てきた音楽は颯爽として明快。美しくて、輝くベートーベンだった。
最初の1番は12-4の弦で2管の小編成。流れが気持ちよくて、はつらつとして、さわやかな演奏。弦がきらめき、星屑をまき散らしているかのようで、音色の美しさにうっとり。各声部は極めてそろって音を出すのに、おおらかに歌い、締め付け感が全くない。そして、その声部の音を際立たさせて、いろんなところで新しい音を感じる。最初からこれか!すごいな。
次の8番、コントラバスが一人増え、数人の演奏者が入れ替わった。こちらも流れのよさ、はつらつでさわやかな演奏はそのままで、声部が混とんとして、これもまた美しい。なによりリズム感がいいね。
流れに身をゆだねて聴いていると気持ちよくて、厳しく重苦しいベートーベンではなく、笑顔で、どうだ!と言っている顔が見えるようだ。といって迫力も十分で、第一楽章の弦の力強さにしびれ、ティンパニの音が小気味よい。
休憩後の5番、弦が16-8になり、トロンボーン、コントラファゴット、ピッコロが増えた。冒頭は極めて明快。引き延ばすでもなく、重々しくもなく。でも軽くはない。弦が増えても、音はびっしっとそろって濁ることなく、キラキラと光輝く。重いテーマも颯爽とこなして、大変気持ちがいい。曲の流れは、いかにも正統的なベートーベンという感じ。
曲の流れに沿うように演奏し、ときどき、弦が強く出てきてびっくりしたり、ティンパニのあまりの強さに驚く。仕掛けはあるものの、オケから極上の音を引き出して、天上の気分を味あわせてくれた。正統的アプローチでありながら、演奏から受ける印象は、運命という暗く重苦しいものではなく、明るく希望に満ちたもの。これは弦の明るく美しい音から受ける印象なのかもしれない。最後もこの演奏を締めくくるにふさわしいびしっとした音。
今回の演奏会は、バイエルン放送交響楽団の極めて美しい音に感激したが、その音を引出し、おおらかに歌わせたヤンソンスの指揮も素晴らしかった。弦の音はドレスデンの様に限界の限りの強い音を出すのではなく、美しい音をどこまでも追求した感じ。この人はいつも曲の新しい側面を見せてくれて、これまでにない魅力で演奏に強く引き込む。今回も同じだった。美しく、重くないベートーベン。この人にかかれば、どんな曲でも魅力倍増だろう。これからも目が離せない。